方言がきつかったので一緒にいたイラン人の友人に応対をまかせ、私はそこに寝そべっていた猫にカメラを向けました。野良猫にしてはとてもきれいで近づいても逃げ出しません。
「何を撮っているんだい」
「あの猫ですよ。とってもきれいですね」
「私と一緒にいつも村の中を歩いているんだよ」
「おや、あなたの猫でしたか」
「こんな小さな時から育てたからね。私が行くところにはどこでもついてくるんだよ」

とまあ、こんな会話が交わされている間、猫はそこに寝そべっていました。おばあさんが少しでも移動するととことことついて行き、また寝そべります。
友人と私はその様子にびっくりしてしまいました。

「犬ならともかく、猫でもあんな風に人にくっついて歩くものなのかなあ」
「本当に小さいときから大切にしていたんだろうねえ」
「それにしてもすごいですよ」
「そういえば、テヘランの人は猫が嫌いで、よく石を投げつけたりしているけど、あのおばあさんはそうじゃないんだね。どうしてテヘランの人はあんなに猫を嫌うの?」
「猫はずるいからです」
「ずるい?」
「この春、ベランダとか庭をきれいにしようと思って、鉢やプランターを買って花の苗を植えたんですよ。ところが、夜になると猫がやってきてそこで寝るんですよ。おかげで苗はぺちゃんこになってしまってしまって、花を咲かせるどころではなかったんで、悔しかったんですよ。どうしてわざわざあんなところで寝るんだろう」
彼には悪いのですが、思わず笑ってしまいました。
「猫ってそういうところが好きだから〜〜。ちょっと狭い不思議なところで丸くなって寝るんだよね〜〜」
「そうですか?」
「そうそう。ちょっと前に日本でも、鍋の中でくるっと丸くなって寝る子猫がものすごく話題になったんだよ〜〜」
「鍋ですか」
私の住むアパートの斜め前の建築現場で働く労働者たちは、猫を見ると、それがちょっと離れたところを歩いているものでもわざわざ走っていって石を投げつけます。高校生くらいの男の子たちが子猫を蹴っているのを見たこともあります。猫好きにとってはちょっと辛いところなのですが、おばあさんとおばあさんを信用して大好きな猫の様子に、山歩きの連続で筋肉痛ではあっても、ちょっとうれしくなってしまったのでした。
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