ゴフトグーイェ・タマッドンハー

留学生としてイランにやってきてから10年以上。イランの人々とのあれこれや、イランで見たこと考えたことなど。

 私がある日知り合いの家に上がり込んで、あれやこれやと世間話に興じていると、宿題を終えた小学校一年生の娘さんがやってきました。

 このおうちはお母さんが日本人でお父さんがイラン人という夫婦で、この娘さんはいかにもハーフらしくどちらでもあってどちらでもない顔立ちをしていて、これまでに会ったイランの子供の中でも群を抜いてかわいいと私は思っていました。

 その彼女が深刻な顔をして言うのです。
「あのね、サラさん、聞いて」
「何?レイラちゃん(仮名)」
「私のクラスにね、バハーレっていう子がいるのよ。ものすごーくかわいい子で、大きな子たちはみんなその子ばっかり、バハーレ、バハーレってひいきするの。私たちには、『あなた達、何しているの?そんなことしちゃ駄目よ』とか怒ってばっかりなのに」
「え〜、レイラちゃんだってそんなにかわいいのに(ものすごく本気)」
「だめなの。バハーレはね、こうやって座っていてもものすごくかわいくって」
 (と、いすに座って目をぱちぱちさせながらちょっとしなを作ってみせる)
「バハーレだけがゴンチェ(薔薇などの花のつぼみのこと)みたいにかわいくって、私たちなんかピヤーズチェ(球根や小さなタマネギなどのこと)みたいに土の中にいて、ゴンチェになれないのよ」
 (手で球根の形を作ってみせる)

 深刻な様子のレイラちゃんには悪いと思いつつ、ちょっと笑ってしまいました。
 お母さんの話によると、バハーレちゃんはおとなしくて本当にかわいいのだそうです。

 もともとイラン人は子供が大好きであることと、テヘランなど都市部では出生率が下がって一家の子供の数が一人か二人になっていることもあり、子供が大変にかわいがられます。特に容姿については「かわいい、かわいい」で(本当にかわいい子が多いのですが)、大人が彼らに投げかける、かわいらしさを表す用語を書き出したらきりがないくらいです。
 このように家族だけではなく、親戚中から「かわいい、かわいい」と言われて育った子が、学校という同世代の子が集まる場所で、自分の他にもかわいい子がいることを知って、生まれて初めて挫折感を味わっている様子がおかしいやらかわいいやらで、思わずレイラちゃんをぎゅうと抱きしめてしまいました。
 その後彼女は、「私たちにとってはあなたが一番かわいいのよ」とお母さんからも抱きしめられ、お父さんにからかわれ、ずいぶんと慰められたようでした。

 こんな風に、ちょっと傷ついた時にちゃんと家族や親戚がそれを受け止めてくれるっていいなあと、その様子を見ていて思ったのでした。
 無条件の親の愛情と触れ合いが子供の心を一番慰めてくれるように思います。


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 道路を横断しようとしていたら、後ろから腕を叩かれました。
 何かと思ったら、杖をついた小さなおばあちゃんがいて、「道路を渡してちょうだいよ」と手を差し出しています。
 もちろん断る理由などありませんから、おばあちゃんの手を引いて、自動車を止めながらゆっくりと道路を横断し、向こう側まで渡してあげました。
 「どうもありがとうね」
 礼を言うとおばあちゃんはまた杖をつきつき歩いて行ってしまいました。
 その、あなたは当然のことをしただけだよ、という自然な態度に何となくうれしくなってしまいました。

 私が頼まれることは滅多にありませんが、こういう光景はごく当たり前に見かけます。
 お年寄りが若者に遠慮をしていないというのはいいなあと思います。また、若い人たちも親切ごかしに何かしてあげるのではなく、当たり前に彼らに親切にしてあげています。もちろんそうでない人もいますけど。

 老人や子供など社会的弱者に親切にしてあげることは、コーランにも記された義務です。そのためお年寄りが権利主張することは、「私はあなたに神の命令を果たす機会を与えてあげた」ということになり、卑屈になる必要はありません。上のケースでは私がおばあちゃんに感謝をしなくてはいけません。「私が善行を行う機会を与えてくれてありがとう」

 バスの中でも子供は優遇されますが、学校へ行くくらいの年になるとお年寄り、妊婦、小さな子供を抱えたお母さんには席を譲り、また譲られた方も遠慮なく譲られてくれます。断る時も、日本の一部の方のように「自分は席を譲られるような老人じゃない」などという感じではなく、「近いから大丈夫」「あなたこそ座っていなさい」「私よりこちらの方を」等々、譲ろうとした方が気まずくならないような断り方をしてくれます。

 私はもちろん本来なら席を譲られるような年齢ではないのですが、外国人だからということでよく席を譲られます。もちろん気持ちだけありがたくいただくのですが、旅人には親切に、という精神もきちんと生きているようです。


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参考までに

 イラン暦

ファルヴァルディーン月(1月) 春分の日から31日間
オルディーベヘシュト月(2月 )31日間
ホルダード月(3月) 31日間
ティール月(4月) 31日間
モルダード月(5月) 31日間
シャフリーヴァル月(6月) 31日間
メフル月(7月) 30日間
アーバーン月(8月) 30日間
アーザル月(9月) 30日間
デイ月(10月) 30日間
バフマン月(11月) 30日間
エスファンド月(12月) 29日間



 ※閏年はエスファンド月に一日加えます。




イスラーム暦(ヒジュラ暦)

括弧内はペルシア語の発音
ムハッラム月(モハッラム)
サファル月
ラビーユル・アッワル月(ラビーヨル・アッヴァル)
ラビーユル・サーニー月(ラビーヨル・サーニー)
ジャマーディユル・アッワル月(ジャマーデヨル・アッヴァル)
ジャマーディユル・サーニー月(ジャマーディヨル・サーニー)
ラジャブ月
シャアバーン月
ラマダーン/ラマザーン月(ラメザーン) 断食月
シャッワール月(シャッヴァール)
ズィー・カアダ月(ズィー・ガアデ)
ズィー・ハッジャ月(ズィー・ハッジェ) 巡礼月




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 日本から来た大学の先生と町を歩いていた時のこと、先生が何かに大受けしています。何だろうと思ったら、「腰パンにチェーンって、半年遅れだわー」とのこと。どうやら町を歩いている若い男の子のファッションが、少し前の日本の男の子たちのものと同じらしいのです。
 先生に高校生の息子さんがいらっしゃるということと、社会学を研究されているということから、この「半年遅れの流行」現象にはいたく興味をそそられたようでした。

 高校生から大学生くらいの男の子たちの間で今年流行ファッションは、先生の指摘したTシャツを二枚重ねて、パンツをルーズにはいてチェーンを下げるというものに、髪を長くのばすというものです。
 女の子はイスラミック・ドレスコードがあるので変化を持たせるのは難しいのですが、それでも今年の流行は、体にぴったりした膝にも届かないような短い丈のコートに、ハンカチをかぶっているのではと思うほど小さな面積のスカーフ、あるいはシャール(長い長方形のスカーフ)の幅を狭く折ってできるだけ髪を見せるようにしたもの。それから茶色や黒、水色といったマニキュアに、縁取りと地の部分の色が全く違う口紅、髪は金や白。

 先生の考察によると、衛星放送や雑誌などで情報が入ってきて、それが流行として行き渡るのに半年かかるから計算が合うとのこと。

 私は日本や欧米の流行にあまり興味がないし、衛星放送などもほとんど見る機会がないので気がつかなかったのですが、イランのファッション流行はイラン独自のものだけではなく、ちゃんと外国の影響を受けていたらしいのです。
 日本では恐らく、イランではみんなイスラム的な服装をしていて真っ黒(チャードルのイメージ)だというイメージではないかと思うのですが(私もイランに来るまではそうでした)、実際に住んでみると、ちゃんと毎年のように流行ファッションがあって、若い子たちは競って流行の格好をしているのです。
 友達同士、あるいは恋人同士で公園や喫茶店に行き、携帯電話のチェックをしたり友人に電話したりというのもありです。

 もっとも、毎年のように流行の服装ができるのは、一部の生活にゆとりのある家庭の子弟だけで、多くの家庭では毎年のように何枚もの服を買い換えるなどできません。イランにおける貧富の差はこの数年、確実に広がっているのです。


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 イランでは三つの暦が使われています。
 基本は春分の日を元旦とするイラン暦で太陽暦です。
 宗教に関する事柄に使われるのがヒジュラ暦(ペルシア語ではヘジラ)で太陰暦。
 それから、諸外国との関連で使われる西暦(グレゴリオ暦)。

 カレンダーはもちろん、新聞にもこれら三つが併記されますし、テレビやラジオなどでもニュース番組の冒頭ではこの三つを並べます。
 例えば今日は、シャフリーヴァル月(イラン暦6月)5日、ラジャブ月(ヒジュラ暦7月)9日、西暦8月26日です。
 正教徒であるアルメニア人は彼ら自身の暦を使って宗教行事などを行っています。

 イラン人と話す時はイラン暦を、イラン人以外の人と話す時は西暦とイラン暦を使うので、時々混乱してしまいます。
 さらに混乱に拍車をかけるのが、ペルシア語の表現です。
 中東全般に、日没により一日が終わり、次の一日が始まるというのが伝統的な暦です。今では深夜に日付が変わる西洋風を採用していますが、普通に会話する時はこの伝統が残っていたりするので注意が必要です。
 例えば、友人の家へ遊びに行く約束をする時に、ペルシア語の文法に則って「金曜日の夜」を表現する時には、「シャベ(夜)・シャンベ(土曜日)」と言わなくてはいけません。うっかり「シャベ・ジョムエ(金曜日)」と言うと、木曜日の夜になってしまいます。日没と共に日が変わっているからです。
 もし「金曜日」という言葉を使いたいなら、文法的な語順とは逆に、「ジョムエ・シャブ」と言わなくてはなりません。この使い分けが慣れないうちはちょっと難しく、間違えてしまいます。
私もイランに来たばかりの頃は、「どうして昨日来なかったのよ」と言われて初めて気付くということもありました。

 でも、考えてみたら、日没と共に日付が変わるというのは自然ですよね。

 イラン暦は西暦と同じく太陽暦で1年が365日(4年に一度閏年)ですが、イスラーム暦は月の満ち欠けに従う太陰暦で、1年が約354日です。つまり、イラン暦や西暦よりも1年が10〜11日短いのです。
 このため、毎年、暦が西暦に対して10−11日ずつずれていってしまいます。
 つまり今日はラジャブ月9日ですが、イラン暦の一年後の今日は、シャフリーヴァル月5日ですが、ラジャブ月の20日くらいになっているはずです。


 古典文学作品では時に、夏や冬という季節を、ペルシア語やアラビア語ではなく、ヘブライ語で表現していたりします。気取った感じがしたのでしょうね。

 カレンダーによると今日は、ザカリヤー・ラーズィー(ラテン語ではラゼスとして有名)という、中世イスラーム世界における高名な臨床医(元錬金術師)の記念日です。彼を記念して薬学の日でもあります。


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 今日はインターネットへの接続がうまくいきません。

 イランは未だに電話回線によるダイヤルアップです。
 速度は遅いし、みんなが使う時間帯だとつながりにくいしでいらいらすることも多いのですが、一つだけ便利だなと思うことがあります。

 テヘランには何社かプロバイダーがあり、そこと契約している人もいますがこちらは少数派です。多くは、インターネットカードを使って、インターネットに接続しています。
 これは、2時間から20時間までの各種のカードを買い、そこに記されているUser NameとPassword、電話番号をコンピューターのインターネット接続のページに入力し、接続するというものです。

 カードの値段は様々ですが、平均的なところでいうと、10時間のカードが3万リヤール(400円弱)くらいです。市内のキヨスク、雑貨屋、文房具店、コンピューターショップなどいろいろなところで売られているので、簡単に手に入ります。ただし、深夜に時間切れになってしまうと、翌朝まで買えないのが難点です。しかし、電話回線さえあればどこでも利用できるので、便利といえば便利です。

 私はテヘラン最大手のプロバイダーと契約しているのですが、最大手だけあって利用者も多く、昼休みと夕食後の時間帯は全然つながらなくなってしまいます。このため、インターネットカードも利用しています。カードの方の接続は、スピードが遅いことが多いのですが(時に28kptsということも)、つながりやすく、急ぎの用がある時には助かります。このため、私のデスクトップにはインターネット接続のためのアイコンが三つ並んでいます。

 今日はプロバイダー接続の方は、接続はでき、メールの送受信はできるのですが、向こうで何をやっているのか、サイトへの移動が全然できません。うんともすんとも言わない状態で固まっています。イラン人に言わせると、情報省が何かやっているのだ、というのですが真偽のほどは分かりません。

 ブロードバンド環境はまだまだ遠い夢のようです。電話回線事業者によると、電話回線自体は光ケーブルに変更になりつつあるらしいのですが。(ちなみにイランの電話回線事業の80パーセントを請け負っているのはN○Cです)

 ということで、イランのあちこちで撮った写真など、本当はアップしたいのですがあまりの遅さにあきらめているのです。


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 企業の駐在員の方たちから聞いたところによると、テヘランの交通マナーはアジア中東アフリカ諸国の中で最悪だそうです。

 自分の前を走ることを許さないかのように無茶な追い越しをする。少しでも隙間があると割り込む、ウィンカーを出さずに右折左折をする。道路のどこでもUターンをする。絶対に人に道を譲らない等々。あげるときりがないくらいです。

 自分が曲がりたい方向に車線を変更しておくという概念はここには存在しないため、隙間があると割り込むという癖と相まってすさまじいことになります。例えば、一番左端の車線から他の車を押しのけながら右折をするといった無茶は日常茶飯事ですし、5車線道路を一気に車線変更することもごく当然の行為です。
 自分が先に行くためなら反対車線を走ることも平気です。タクシーでもこれをやるので、いつか私は事故死するのではないかと不安なほどです。通訳兼ガイドとして日本の方と一緒に車に乗っていると、皆さんかなりびっくりされ、あるいは何回かは悲鳴を上げられます。
 2車線の道路のはずが、3車線4車線道路であるかのようなぐちゃぐちゃな車列を見ていると唖然とせずにはいられません。これでは直進するのも曲がるのも容易ではありません。テヘランの渋滞の何割かは、車線をきれいにするだけで解消できると確信するほどです。

 こうしたマナーの悪さに加えて、他人に絶対に道を譲らないという悪癖が渋滞に輪をかけます。
 信号のない合流などで一台おきに入れてあげる、同じく信号のない交差点でちょっと譲ってあげるという気遣いだけでテヘランの渋滞はかなり解消できると思うのですが、実際には、絶対に入れない譲らない精神のおかげで万年渋滞です。

 こうしたところにも、「他人に親切にする必要はない」精神が遺憾なく発揮されています。
 あまりのひどさに何度かイラン人に聞いたことがあります。「仕事場や家では、『どうぞ、あなたがお先に』ってしつこいくらいに譲り合いをするのに、どうして道路ではそれをしないのか」と。答えは「どうして知らない人にタアッロフ(※)をする必要があるんだ?」というものでした。

 イランの死亡原因の二番目が事故死だというのもうなずける話です。(日本もそうでしたか?)

(※)譲り合いをすること、食事などをすすめること、お世辞などを差す。イラン文化の根幹をなすものであるはずだが、身内にのみ使うもので他人には使われないらしい。


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 もう8年くらい前になりますが、テヘランから西へバスで約2時間のところにあるガズヴィーンへ行ったことがあります。

 市内にあるモスクなどを回るうち、次第に天気が悪くなり、みぞれとなってしまいました。
 ある店の軒先で寒さに震えながら雨宿りをしていたところ、こちらに気がついたその店のおじさんがそこでは寒いだろうと中へ入れてくれました。恐らく家へ帰ろうとしていたのでしょうに、ストーブをつけ直してくれ、お茶までふるまってくれました。
 私はまだペルシア語もよく話せなかった頃で、おじさんも英語は全然分からず、たどたどしい会話しかできませんでしたが、家へ来いと誘ってくれているのは分かりました。どうやら今日は娘さんの結婚式なのだそうで、それに誘ってくれていたのです。

 少し離れたところにあったおじさんの家へ行き、まず昼食がふるまわれました。
 昼食を食べている間に結婚式の用意はすっかり調い、ピンク色のドレスを着た花嫁さんが私たちに挨拶に来ました。彼女は少し英語ができたので、結婚おめでとうと伝え、相手はどんな人なのかなどなど話すうちお客はどんどんと集まり、音楽がならされ、踊りが始まっていました。こちらも何がなんだか分からないまま踊らされ、お菓子をふるまわれ、気がついたらもう暗くなろうとしています。
 その日のうちにテヘランに戻らなくてはならなかったため、泊まっていけと言ってくれるのを必死で理由を説明し、おじさんの家を辞去しました。
 まだ式の途中だというのにおじさんとその家族はバス乗り場まで送ってくれ、バスのチケットとお菓子を手渡し、こちらに料金を支払わせずバスに押し込みました。

 イランの人は、他人には親切でないのですが、旅行者にはとても親切です。このガズヴィーンでの出来事と同じようなことはイラン各地で体験しました。
 テヘランに住んでいると「他人」として扱われ、地方へ旅行へ出かけると「旅人」として親切にもてなされる。この微妙な温度差がイラン人の微妙な複雑さを表しているような気がします。


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 もう一度ペイカーンについて。

 イランの誇る(?)国産車「ペイカーン」の故障の多さは信じられないくらいです。リコール制度があったなら国が破産するというイラン人の言葉は、あながち冗談とも言えません。
 報道されることはほとんどありませんが、機械的な故障による事故についてはイランに来て以来、数多く耳にしています。私の知り合いにも、走行中にブレーキがきかなくなり事故を起こした人がいます。幸いなことに、テヘラン市内で、渋滞の中だったのでスピードはさほど出ておらず、軽い追突で済んだとのこと。しかし、私の友人の知り合いは、町と町を結ぶハイウエイを走行中、突然ハンドルが取れ、ブレーキも間に合わず他の自動車を巻き込む大衝突を起こし亡くなっています。これが珍しい話ではないというのですから怖い国です。

 日本でも某社のリコール隠しが問題になっていますが、イランでも欠陥車の製造が人命に関わる問題だということを自覚して、早急に自動車製造に「慣れて」いただきたいと切に願うものであります。

 ちなみに、ペイカーンの新車の価格は、日本円で60-70万円の間(大卒公務員の初任給が200−300ドルの間)。おもしろいのが、新車は信用できないからと、修理が全て終わっている(笑)中古車の方を選ぶ人も多いです。また、中古車でも新車とさして変わらない値段で取引されています。
 そのほかイランで流通してるのは、プジョー、ルノー、韓国車各種(キア社のPrideが一番人気)。比較的安い韓国車でも100万円を超えます。日本では販売されていない日産のPatrolという4WDも多く見かけます。

 もう一つちなみに、ペイカーンは20年以上マイナーチェンジのみで同じ型のものを生産しているため、複雑な電子機器などない、非常に単純な構造をしているようです。エアコンさえないくらいですし。
 そのため、こちらの人は、ちょっとした故障なら自分で修理してしまいます。たいていのドライバーはドライバーを車内に常備しており、それ一本でちょいちょいと修理しているのを見ると、何とも言えない気分を味わえます。


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 20年以上生産しているにもかかわらず、未だに完全なものが作れないというイランの国産車「ペイカーン」について。

 考えてみたら、国産車がある、というのはすごいことなのです。少なくとも、中東諸国で国産車を持っている国はありません。でも、あればよいというものではないことも確かだと思います。

 イラン国営イランホドロー社製による国産車、その名も高き「ペイカーン(「矢」の意味)」は欠陥車が多いことで有名です。フランスのプジョー社から技術提供を受けているのだそうですが、プジョーとは似てもにつかない仕上がり具合です。

 筆者がこれまでに知り合いから聞いているだけでも、新車が家に届いたと喜び勇んでエンジンを入れてみたらエンジンがかからない(どうやって届けてきたのか不思議)。あるいはギアが一つ入らない。ドアがきちんと閉まらない。マフラーがついていなかった。走行中にブレーキがきかなくなった。等々、あげたらきりがないくらいです。

 さすがに初期不良品は修理、あるいは取り替えをしてくれるらしいのですが、数ヶ月待たされることもあるといいます。そのため、そんなに待つくらいなら、と自腹を切って修理に出す人も多いとのことです。あまりのひどさにもちろんユーザーは苦情を言います。しかし苦情を申し立てた人に対するメーカーの答えがふるっていました。
「最近マイナーチェンジをしたからまだ慣れていないのだ。仕方がないだろう。文句を言うな」
 これが言い訳として通るのですからすばらしい国です。通っていないのですが。日本でも某社の欠陥隠しが問題になっていますが、イランでは隠す気もなく、品質向上に努める気もなく開き直っています。

 日本のリコール制度についてイラン人に説明したところ、「国が破産する」と断言されました。故障のないペイカンは存在しないからだそうです。なんとも恐ろしい話です。


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 タクシーでテヘラン市内を移動中の出来事。

運転手が斜め前方の自動車に何か合図を送っているので何かと思ったら、右後ろのドアが半ドアのままでした。それが閉まるのを見ながら運転手が私に向かって話しかけてきました。
「日本の車って、ドアが閉まっていなかったらなんだかアラームが出て知らせてくれるんだって?」
「そうらしい。それだけじゃあなくて、ドアが閉まっていなかったり、シートベルトを締めていなかったらエンジンがかからないとも聞いているけど」(しばらく日本へ行っていないので自信がない)
「本当か?何て先進的なんだ」
 運転手は簡単の叫びをあげ、ひとしきり日本の技術に感心していました。
「日本では毎年違うモデルの車が出るってのは本当か?」
「毎年ってことはないけど、何年に一度かはモデルチェンジをするし、一つの会社がいくつものモデルを作っているから、そういう意味では毎年違うモデルを作っているかも」
「何てすごいんだ!!!でもそんなことをして、何のトラブルもないのか?ペイカン、知っているだろう?イランの国産車の」(このタクシーは韓国車)
「知ってるよ。たくさん走ってるじゃん」
「あれなんか、同じモデルをもう20年以上も作っているくせに、まだ完全なものが作れないんだぞ」
 完全ではないものを20年以上作り、売っているイランという国はすごいとしか言いようがありません。

 イラン人に一番人気はやはり日本車です。ベンツやBMWもそれなりに人気ですが、やはり、技術がすばらしい、というイメージからか日本車が一番、と言います。イラン人あこがれの日本車ですが、アメリカの経済制裁に素直に従う日本は、イランへの新車の輸出を禁じているため、5年落ちの中古車しか入ってきませんし、それも数が少ないのでそう簡単には手に入りません。
 ちなみに、一番人気は三菱のギャランだそうです。理由はよく分かりませんが。


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 イランは偽物天国です。それも、高級ブランド品の偽物だけでなく、日用品の偽物も非常に沢山流通しており、本物を探すのが難しいほどです。

 女性が日常身につけなくてはならないスカーフでは、数年前には、シャネルとルイ・ヴィトンのロゴが二つともプリントされたものが流行しており、思わず目を疑ってしまいました。
 電化製品では、panasoanicとsunyが人気です。panasoanicのロゴは一見、本物とそっくりなので、こんなデザインはないよなあ、と思いつつ、一瞬だまされそうになります。

 これだけあからさまに偽物であるのだから、イラン人もそれを分かっているのだろうと思っていたのですが、案外そうではないのです。
 イランの市場にはDoveのシャンプー、コンディショナー、石けんの偽物が大量に出回っています。たまたま本物を持っていたある日本人が、「これが本物だよ」と見せてあげたところ、「何言っているんだい、それが偽物じゃないか」と言われたそうです。
 私自身も、実家はペンチなど作業工具のメーカーなのですが、この偽物も大量に流通しているのにはびっくりしました。ある店で聞いてみたところ、「本物に決まっているじゃないか」と自信満々です。どう見ても中国製の偽物なのでそれを指摘したところ、「あんたこそ嘘つきだ」と逆ギレされてしまいました。これでも一応メーカー関係者なのですけど。

 偽ブランドを偽物であると認識して所有することについては、そういうのもありかと思うのですが、イラン人の「自分たちは全て本物を持っている」という自信と、本物を目にしてもなおそちらが偽物であると言い切れる自意識の強さはどこから来ているのか、未だに理解不能です。


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 今日は生活費のため、ドルをリヤールへ両替。

 銀行ではその日のレートが各支店に回る10時以降でないと両替をしてくれないので、11時近くになってから私の住む地区内にある両替可能な銀行へ行きました。
 この銀行にはリヤールの普通口座と送金のための外貨口座とを持っていて、この支店を利用している外国人が私一人ということで行員ともすっかり顔なじみです。

 イランの銀行はたいていいつでも混んでいるのですが、今日の混み具合は一段と激しく、外貨受付へたどり着くのにも人をかき分けなくてはなりませんでした。

 原因の一つは明日が休日ということで、お金をおろしておこうという人がいつもに比べて多かったということのようです。

 混雑のもう一つの原因は、先日、携帯電話の料金請求書が配られ、その振り込みのために人が集まっていたということもあるようです。
 イランでは光熱費などの銀行口座からの引き落としはやっていません。二ヶ月に一度やってくる請求書を持って銀行から振り込むのです。このため請求書が配られた直後の銀行は大変な混雑です。
 たいていの支店では振り込みのための窓口が一つしかなく、また順番を守らない人が多いため、振り込みや入金、出金の人々が殺到して阿鼻叫喚の世界が出現します。みんな自己主張が強いので、どうして自分の順番が遅いのかと窓口に怒鳴り、手際が悪いと怒り、支店長にかみつき、混乱に拍車をかけます。

 少し前に、各銀行の本店や少し大きな支店では日本の銀行にもあるような順番カード発行機を設置したのですが、それまでコネや顔パスで順番を守らなかった人たちによる、自分たちの権益を守るための頑強な抵抗などにより早々に廃止になったそうです。

 預金の引き出しのためのCD機も普及しつつあるのですが、カードや機械本体に故障が多いことと、イランの紙幣があまりにぼろぼろで機械にかからないという理由から、結局窓口を利用する人が多いです。

 光熱費などの口座引き落としに関しても、まだそれができるだけのシステムができていないためにできないのだそうです。

 機械に頼りすぎるのもどうかとは思いますが、全てを人力というのもそろそろ限界なのではないかと、銀行に行くたびに思うのです。


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 プライドとコンプレックスが入り混じった、なんともひねくれた表現だなあと感じるもの。
 その筆頭「イーラーン フーベ?(イランっていい(国)かい)?」

 イランに来た人なら必ず一度は聞かれているに違いないこのフレーズ。何も気にしなければ、「うん、いい国だね」「いやー、面倒ばかり多くて」と単純に答えられるし、私も留学当初は何も考えずに答えていました。
 しかしある時、ふと気がついたのです。いいと答えようが悪いと答えようが、彼らは満足しないのです。かつての栄光を失ってしまった自分の国に対しての、何とも複雑なプライドとコンプレックスが、この一言に込められているのではないかと。
 現在、自分たちが置かれている経済的、政治的に困難な状況を否定してほしい気持ちと、自分たちは本来こんな状況にあるべきではないはずだという気持ちとが絡み合い、「いい国だね、私は好きだよ」と答えられても「何言っているんだ、昔はもっといい国だったんだ」と思うし、「面倒ばかり多くて嫌な国だよね」と言われても「そんなことはないだろう?」と思うのです。

 もちろん、単純にイランに対する印象を聞いているだけの人もいるかもしれませんし、深読みのしすぎなのかもしれません。しかし、他の留学生など少し長めにイランに滞在している人に聞いてみても、私の感じたようなことを感じると言いますから、私の気のせいではないようにも思います。

上の質問に対する最近の私の返答は、「どんな国にもいいところと悪いところがあるからね、一言でなんか言えないね」です。「そんなことを聞いているんじゃない」という反発が返ってくることもままあるのですが。
 イラン人へのお願い。もし単純にイランに対する印象を聞くなら、「イランをどう思う?」にしてください。イエスかノーかで答えなくてはいけないような質問の仕方はやめていただきたいのです。一つの国の印象はイエスかノーで答えられるような単純なものではないからです。


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 国際感覚、あるいは常識について考える時、忘れられないエピソードがあります。

 ご存じのようにイランは、「イスラーム共和国体制」をとっていて、そこに住む人は「イスラーム的規範」に従うことを余儀なくされています。
 その一つが女性に対するヘジャーブ着用義務です。

 これに従い、女性はたとえムスリムでなかろうと、外出時には髪が見えないようにスカーフで覆い、体型があらわにならないよう、コートあるいはチャードルを着なくてはなりません。

 非ムスリムがヘジャーブを着用しなかったからといって罰する法律はないのですが、不快な目に遭うことを避けるため着用することが一般的です。まあ、郷に入ったら郷に従えということです。


 ところが、イランに駐在している各国大使館館員や企業駐在員夫人たちにとってこのヘジャーブ着用は苦痛以外の何ものでもないそうです。
 確かに、近くの店までちょっと買い物に、という時でさえスカーフをかぶらなければならないというのは面倒かもしれませんが、それにしても拷問であるかのように文句を言う彼女たちを見ていると不思議な感じがします。
 外国人、特にアジア系の国々の人が日本へ来れば日本の慣習に従うことが当たり前だと彼女たちは言うだろうにと。


 そうしたある日、ヘジャーブ着用にうんざりしたある大使館員夫人が、アメリカの星条旗をコートに仕立てて外出するという暴挙を行いました。


 イランはアメリカとイスラエルを「敵国」として、何か集会があれば必ず「アメリカに死を、イスラエルに死を」とシュプレヒコールをあげる国です。
 そんな国でのこの大使館員夫人の行動はいったい何だったのでしょうか。
 異教徒にヘジャーブを強要するイラン政府への抗議だったのか、ストレス解消のためのパフォーマンスだったのか。私には理解できません。
 もちろんイランでも日本がアメリカべったりな国であることは知られています。それにしてもイラン側を挑発すると取られても不思議でないようなこの行動、呆れないではいられません。たとえ私的とはいえ、イラン人が出席している場です。自分の立場が分かっていないのでしょうか。

 日本を他国へ持ち込むことが「国際人」なのかなあ、と思った出来事でした。


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Author:さらさや通称サラ
留学生としてイランへやって来て12年目。
テヘラン大学で日本語講師として働き始めて3年目。
テヘランの片隅でひっそりと(?)暮らしております。

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